いいかねPalette代表 樋口聖典

インタビュー

インタビュー/ yuko

「Live Now」とは?

やりたいことや夢が見つからない人へ。好きなことで人生を生きるためのヒントを提供しています。

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※いいかねPaletteはコロナ感染症の感染拡大防止のため、2020年5月6日まで臨時休館中。記事は休館前に取材したものですが、今の時期だからこそ伝えるべきだと考えそのまま公開しています。現在の営業状況は公式ホームページ及び各種SNSで各自ご確認ください。

現代に、すべてを理論で叶えてくれるドラえもんがいるとしたら、こんな人だろうか。
福岡県田川市には、廃校を利活用した、「なんでもできる施設」がある。そこは、自分が主役になれる世界。自分の歌声を収録してCDにしたり、作ったアクセサリーを販売したり、ライブをしたり。取材に訪れたこの日は、YouTube勉強会が行われていた。相談に親身になって答え、参加者に声を掛け、一時も無駄せぬよう奔走する一人の姿。この空間を創っている人は、どんな人だろう。

―子供の心に帰ってやりたいことをできる世界だと聞きました。その先には何があると考えますか?

そこには幸せがあると思っています。例えば子供の頃の夏休みって、心が自由で、時間がいっぱいあって、好きな友達とやりたいことして遊んでるじゃないですか。だけど、大人になるにつれて責任が出てきたり、こうあるべきとか、お金を稼がないとみたいな色んな制限が出てくると感じてて。本来、それは自然じゃないですよね。

いいかねPaletteの入り口を抜けると、そこにはドラムやギター、ピアノが待ち構えている。訪れた人が自由に演奏するため、音楽が絶えることはない。

―音楽に対するこだわりが人一倍強いようですが、それはなぜですか?

単純に僕が音楽が得意だからです。僕が活動する以上、僕自身がパワーを出せる領域であることが必要です。そして僕の運営する株式会社BOOKの理念は、「どこでもできる世界をつくる」、「なんでもできる世界をつくる」、「だれでもできる世界をつくる」の3つです。つまり一言でいうと自由な世界を作りたいっていうのがあって。人々が自由になるために、音楽で田川を盛り上げるということが有効だと思っています。音楽って、比較的お金をかけずに、自由にできるんです。ギター一本と歌さえあれば楽しめるし、どんな素人でもできて、年をとっても能力が衰えません。

―常に新しくて楽しい企画を思いつく樋口さん。そのアイディアはどこから?

特に何もやってないんですが(笑)、一つだけあるとすれば、考えるのが凄く好きだということですね。日常の中でゲームをやってるみたいに考えているかもしれないです。例えば、悩み相談を受けたら、その問題が起きるパターンってどういうケースがあるかって考えるんですよ。だから、解決するためには、どういうツールを使ってどういうルールを作って、とか。ものごとを一般化して考えるクセはあると思います。例えば、恋人が「電話したいときにできない」ということで怒っているとするじゃないですか。そしたら、「彼女からすると、電話したいんじゃなくて、いつでも心にアクセスできる状態が欲しいんじゃないか?」みたいに考えるんですよ。それに対しては、文字情報でのコミュニケーションツールを使うという解決法があります。これって、恋愛というシチュエーションだけでなく、社員と上司の関係でも置き換えることができます。この問題を抽象化すると、「人とのコミュニケーションをスムーズにする解決法」ってことで、いろんなパターンに当てはめることができます。こういう風に細分化、抽象化して定義しておくと、使い回しがきくんです。

―副業や趣味など、仕事以外のわらじを履くことに注目が集まっている時代背景に、何があると思いますか?

SNSで大勢のフォロワーを獲得できたり、クラウドファンディングでお金を集めることができたり。アイディアさえあれば、ちょっとの力でものすごく大きな力を生み出すことができる時代になってきています。つまり、個人でできるレベルが上がってきているんですね。それに加えて人間の心の面にも、たくさん要因はあると思ってます。まず、刺激が多くなってきているということ。世の中で起こっている動きを知ることができてしまうんです。何かやってる人が身近にいると、自分にもできるかもしれないとか、自分もやってみたいとか、その欲求がブワーっと出てこれる状態にある。さらに、何が楽しいか、何に幸せを感じるかの価値観も変わってきている気がします。高度経済成長期は、「お金を稼ぐ=幸せになれる」と信じた人たちが世の中を作ってきたわけです。お金があれば車や家が買える、海外旅行にも行ける。当時はお金がすなわち幸福だったんですね。でも僕らの時代は、生まれたときすでにある程度お金があって、お金で何かを買うだけでは物足りなくなってきました。大企業のように安定したお給料をもらうということで得られる幸福度が低い状態で我々は生まれてきているということです。幸せに対して麻痺しているとも言えます。

―「意味がないことや非合理的なことをやった方が良い」とブログで拝見しましたが、その理由はなんですか?(樋口さんはブログを毎日更新している。大変面白いのでお勧め。)

バグが起きやすいからです。合理的な方法って、頭の良い誰かがもう答えを見つけているんです。例えば、新商品を僕が開発したとすると、その商品がどうしたら売れるかっていうのは、大体データが出揃っているわけです。でも過去の正解のやり方を踏襲していくだけでは、新しい発明って出てきにくい、つまり、バグが起きにくい。新しい発明がされないと、社会ってアップデートされないじゃないですか。今必要ないと思われることもやっておかないと、人類自体が対応できなくなって滅びてしまう。社会ってフラクタル構造※になっていて、社会がバグった方が良いなら、一個人もバグを起こしたほうが良いんです。だから、世界を変えることに貢献できない人間はいなくて、すべての人間に世界を変える可能性があると思っています。いいかねPaletteが盛り上がると、田川が盛り上がる。田川が盛り上がると、地方が盛り上がる。地方が盛り上がると、日本が盛り上がる。このように波及していくことで、世界が幸せになれると思っています。

(※フラクタル構造…どの一部分を切り取っても、全体と同じ形を表す構造のこと。)



―なぜ、田川なんですか?

田川って超限界都市で、日本の少子高齢化・過疎化の最先端を行ってるんです。つまり、日本の田舎の行く末は田川のようになる可能性が高い。ということは、田川が失敗すると、全国が同じように失敗するということです。逆に田川で成功例を示すことができれば、他の田舎を盛り上げることができるんです。さらに日本に限らず、すべての国の未来はこの一途を辿る可能性が高いわけですから、この田川を実験都市にして、体力がなくても、お金を使わなくても、幸せになれる社会を作っておかないと、ひいては地球が不幸になるんです。で、ここ田川において若手の僕が失敗をすると、「ほら見たことか、もっと確実に堅実に利益を出せる人を選ばないと」という雰囲気になってしまうはずです。でも、当たり前なんですが、守りに入って成功するわけないじゃないですか。勝つには、攻めて戦うしかないんです。

ー樋口さんから社会にお伝えしたいことはありますか?

1つあります。それは、「日本で何かに挑戦して失敗して死んでしまう方が難しいよ」ということです。僕はいま借金だらけですが、自己破産という制度がある以上、金銭的な失敗は最終的にチャラにできます。信頼、お金、人脈、それらを全部失ったとしても、海外に住むという選択肢も残されています。なのに、失敗を怖がりすぎて、やりたいことをやらない人が多すぎる。やりたいことをみんながやる社会になってほしいです。


そんな樋口さんも、音楽で生きていた時代、仕事を辞めたくても辞められないつらい時期があった。

朝起きて、今日も一曲作らなきゃ…っていう毎日で。音楽の仕事を始めたときから、いつかどこかで辞めたいと思っていたんですけど、「僕は世間から音楽でしか認められない」と思っていたから、怖くて辞められなかったんです。お金には不自由してなかったんですけど、あの時は不幸でしたね。自殺を考えたこともあります。そんなとき、今のこのいいかねPaletteの話が舞い込んできて。この仕事で成果をだせたら満足できるんじゃないかと直感しました。だから、十分に収入のあった音楽の仕事を辞めて、こっちに来ました。今は正直お金が無くて生活は苦しいんですけど、不幸ではないですね。

―みんながやりたいことをすると、どうなりますか?

やりたいことって、そもそも十人十色で、みんな違うと思うんです。例えば伊集院光さんは、自転車のサドルの錆をとるのがめっちゃ好きらしいんですが、錆をとるのが仕事の人にとっては、おそらくこれって苦痛ですよね。このように、みんながやりたいことをやれば、ちょうどいい感じに社会って成り立つ気がするんです。超理想論ですけど。でもそれを今の社会は、お金という媒体を通して、無理やり社会を成立させようとしています。やりたくないことでもお金をもらえるんだったらやれるよねって自分を納得させていて。だから、やりたいことでお金をもらえる社会になれば良いと思っています。

―やりたいことを見つけられない人もいますよね。

やりたいことや自分の気持ちを探し続けるという姿勢そのものが必要だと思います。そして、やるべきことか、やれるかどうか、やりたいかどうか。これらも大切だと思います。今まで無駄にしてきた活動もこれまでたくさんあるけど、やる前から予測して、「これは効果がありそうだから」ってやってると、やりたいことは見つからないと思います。会社を辞めるのが怖いという人は、仕事を辞めて、ダメだったら次の仕事探して…の繰り返しでもいいし、バイトしながら好きなことを探してもいいんです。それでも恐怖を感じてしまうのは、たぶん、堕ちた後の世界を知らないからですよね。だから、僕にできることは、田舎に住んでても、生活レベルが落ちまくっても、十分楽しいという実例を伝えることです。少なくとも、こういう生き方もあると知ってもらうことはできると思います。


やりたいことで世界を回すという、超理想社会を描く樋口さん。地球の未来を真剣に考えているからこそ、まだその多くが眠っている現代人に喝を入れる。

時間がない、お金がない。

そういう事情はとりあえず置いておいて、「自分が本当にやりたかったこと」をやれる場所に、いいかねPaletteに、行ってみよう。

人生の主役は自分だということを、思い出させてくれるはずだ。

<プロフィール>
株式会社BOOK代表 樋口聖典(ひぐち きよのり)。
福岡県田川市出身。九州大学芸術工学部大学院卒。上位2%のIQを持つJAPAN MENSA会員。
2009年、吉本興業お笑い養成所NSCに入学。お笑い芸人として活動開始。
2011年、(株)オフィス樋口を設立。広告音楽や舞台音楽、映画音楽などの制作に携わる。
2014年、お笑い芸人”どぶろっく”とともに、ロックバンド”どぶろっかーず”を結成。
2016年、(株)BOOKを設立。廃校利活用施設「いいかねPalette」を拠点とし、音楽を軸に故郷田川地域の活性化に取り組む。
現在行っている主な活動は、YouTubeチャンネル「いいかねPalette通信」、Podcastラジオ「コテンラジオ」など。

<いいかねPalette事業紹介>
「どこでもできる世界をつくる」「なんでもできる世界をつくる」「だれでもできる世界をつくる」を理念に、株式会社BOOKが運営する宿泊兼アミューズメント施設。本格的な設備の整ったスタジオでの演奏・録音・編集・映像編集が可能。音楽以外にも、図書館・ドミトリー・ビリヤード・卓球・コーヒーカウンターなども完備。BBQ・ライブ・マルシェ等のイベントも随時開催している。

HP : http://palette.jp.net/
Instagram : https://www.instagram.com/iikanepalette/

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