「あなたは、絶対、うまくいく。そう信じることから始めよう」
そう話すのは、大阪・なんばにある酒場スナフキンの店主、佐々木一平さん。
連日、店は満員御礼。
常連も初来店の客も関係なく、彼の周りでは皆楽しそうに笑っている。
筆者が初めて暖簾をくぐったときは、「将来の夢は?」と聞いてくれた。
人生の目的地を忘れないように、夢を叶えられるように、自分を大切にできるように、後押ししてくれるような場所。
そんな、“パワースポット”と呼ばれているこの店の主は、一体どんな人物だろう。
(取材/yuko , 撮影/yuna)
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―お店を始めたきっかけは?
自分は夢がなくて、バックパッカーで世界一周旅してたんやけど、29歳の時に嫁と出会って。彼女の夢が世界一周に行くのと、居酒屋することやったから、嫁の夢を叶えるのを夢にしようと思ってん。その夢を叶えたっていう感じかな。
―夢がなかったんですね。世界一周はなぜ?
経験を積みたいと思ったからかな。でもヨーロッパくらいでお金が無くなって。人生かけて世界を回りたかったから、いつでも休めるように自分の本拠地である店を構えて、始めたっていう感じ。
―今はメンタルコーチングをされていますが、それはなぜ始められたのですか?
20代はたくさん自分の好きなことやって、30代は何かしら結果出そ思って店がうまいこといったから、40代はこの20年間を伝えていく年にしようと思ってて。それで、自分と関わる人やこれから関わっていく人の人生が輝いたら良いなと思って、nlp資格※を取ったかな。(※カウンセリングやコーチングなどで用いられる、実践的な心理学の資格)
―人の役に立ちたという想いが根底にあるのですか?
みんな誰かの役に立ってるけど、俺の場合は、人生を謳歌してほしいというのがあって。それに対して俺が、目標の達成の仕方とか夢の叶え方とか人間関係とかのガイドになって、みんなの背負ってる荷物を軽くできたら良いかなぁって。それでみんなが自分らしい人生を歩んだら良いと思うね。
―「自分らしさ」を見つけられない人もいますよね。
それがほとんどよ。みんな会社では一生懸命働くのに、自分自身と向き合う時間が無さ過ぎてんのよ。自分と向き合う時間をとってないから、結局自分って何なんやろって思ってまうんよね。
―向き合う時間が長いと、答えは出てきますか?
うん、確実に出てくると思う。
自分と向き合うことは苦しい。でもそれを乗り越えないと、自分が何をしたいかっていうのが分からないし、自分て誰なんかなってなってしまう。ほんだら、今若いうちに悩むのか、年いって悩むのかっていったら、若いうちに自分と向き合っていた方が、絶対に良い。
―自分との向き合い方がわからない人もいると思います。どのように自分と向き合えば良いと思いますか?
ノートに自分の気持ちを書いたり、日記をつけたり、俺らみたいな専門家に頼んで向き合い方を教えてもらったり、方法は色々あると思うよ。
―周りを見たら、そういった時間をとっている人は少ないように感じます。
少なすぎるよ。一日一分でも、五分でも良い。なんでもそうやけど、継続することが大切。あと、諦めないこと。やるって決めたら絶対やる。それができないよね、今日はまあいっかみたいな。
それで、みんな遊びに走ってしまうんよね、ストレス発散に。それも凄く良いことやけど、自分は何者で人生において何を残したいのかとか、自分は社会に対して何に貢献したいのかとか、色々考えることで結局は満たされていくんよね。
―世の中の不平や不満は、自分のことを知らないから生まれると思いますか?
世の中の不平・不満って、変えることができやんよね。変えることができるのは、自分自身だけ。
コントロールできるのは自分自身だけなのに、周りをコントロールしようとするから、みんなストレスが溜まるんよ。自分がモノの見方を変えたら、その不平・不満も何か意味に変わるかもしらんやん。
―凝り固まった思考を変えていく方法はありますか。
新しいことにチャレンジするとか、俺みたいに時々一人で旅に行ったり…結局、色んな価値に触れることと、たくさん経験をすることやと思う。で、夢や目標に対してみんなと話したり、付き合う人を変えてみたりすることが、俺は大切やと思う。
みんな同じ人とばかり付き合ってずっと気持ち良い所にいるけど、それは衰退していってるから。気持ち良いところばかりにいたら成長しないやん。成長したら新しい人とも出会うわけで。
―インスタグラムを見ていると、お店に立ち寄った人が元気になって帰っていく様子をよく拝見します。その理由は何だと思いますか?
俺が、仕事が凄く楽しくて、それが伝播してるから。だから仕事より、仕事までの準備の時間を大切にしてる。子供と遊んだりして、仕事をいい状態に持っていくための時間が一番重要やと思う。
自分が元気じゃなかったらお客さんたちに失礼やし、そういうお客さんが増えるわけやん。みんな「好きなことやっててええなぁ」って言うけど、好きなことをやってるからこそ、もっと良い風にしようっていう向上心が出てきて、悩んだり考えたりするのよね。俺にとって店は自分の子供と同じくらい大切な存在で、大切やから考えたり悩んだりするんじゃないかな。
―今後、酒場スナフキンをどういう場所にしていきたいですか?
パワースポットにしていきたいなと思う。生きたいという証拠は、笑うことやと思うんよね。死にたい人って笑わへんやんか。やから笑顔溢れる店にしていきたいよね。
笑いながら嫌なことって考えられへんから、笑ってる瞬間って、幸せを感じてるときやと思うんよ。そこに携わりたい。
―みんなが幸せになる原点というか。
そうそう。だから、スナフキンで出会って結婚した人も7、8組くらいおって。何かあんねやろなと思うけど、準備を欠かさないということが大切なんやろね。
―休みの日は何をされているんですか?
仕事のことは一切考えずに、全力で休みを楽しむ。子供と遊んだり、人の勉強をすることが楽しいから、そんなんをやったり、体をマッサージして整えたり、ゴルフに行ったり。
休みやのに、みんな仕事のこと考えるから実際休んでないんよね。何が一番大切か言ったら、休むっていう決断を下すんよ、自分に。完全に休む。みんな中途半端やから悩んだりするんや。ずっとオンのままやったら体つぶれたりするしね。
―逃げても良いってことですよね。
良い良い、全然逃げて良い。大事なのは、自分自身がすべての結果を生んでいることを理解すること。全員、自分の中に答えがあるから、俺は全員が成功すると思ってる。成功っていうのは自分らしい人生のことね。
なんでもやろうと思ったらできるけど、みんなができないのは、心でブレーキをかけているから。そのブレーキを察知して、取り外さなきゃいけないよね。自分を止めているものは何かを考えることが大事。
例えば、「俺これをやりたいんやけど、子供おるから…」っていう人多いやん。じゃあ止めてるものは子供、ほんだら子供をどうにかするとできるようになるのに、その方法をみんな考えない。保育所に預けるとか、他の人に見てもらうとか。子供ができても、何やっても、自分の人生なんやから。大人が輝いてなかったら子供も輝かないと思ってるのよね、俺は。子供は大人を見て育つから。やっぱり好きなことをやってる姿を見せる方が輝くよね。
―やりたいことに対して、「でも…」と出てくる要因を取り除いたら、しかるべき人生が待っていると。
そう。それを取り除いたら、あとはやりたいしか残れへんから上手いこといくよね。うまくいかんときは、「でも」があるから。やらへん理由を自分の中で探しているだけ。
―周りの人を巻き込んで楽しもうとする姿勢が印象的ですが、その先に何があると思いますか?
俺はその先は見てない。今しかみてない。みんな先を考えすぎるから、悩むだけであって。そんなん、1年後や2年後に自分がどうなってるかなんてわからへんやん。今だけを楽しむ。今だけを楽しんでいったら、きっと未来も明るい。
―将来を予想しない?
予想しないね。将来どうありたいっていうのはあるけど、仕事に対してどうしたいかっていうのは考えない。だって僕が今に集中せずに違うこと考えてたら、お客さんに失礼じゃない?
―悩んだり迷ったりすることもあると思うのですが、その時は何を軸に決めていますか?
自分の直感。38年間生きてきて死んでないっていうことは、自分の直感が正しかったっていうことやから、自分の直感を信じる。今生きてるっていうことは、自分の選択が正しかったってことやん。それを信じひんくて何を信じるのって感じ。
―直感で決められないことに悩む必要はない?
悩むことは必要やと思うよ。それをどう捉えるかやね。
例えば、家が火事になりましたと。どういう気持ちになる?悲しくなるやろ?けど、違う視点を持ったら、悲しくなれへんと思うねん。家族が全員無事やったら嬉しいやろ?そういう視点の持ち方。家族は全員無事なわけで、火事になってもみんな生きてるからどうにかなるわけやん。これ、死んでたらもっと悩んでたわけやろ。そう考えたら、悩みが小さくなれへん?
―良かった方に目を向けると。
みんな悩んだら、「なぜ私だけ?」とか、「なぜ」って自分が下に向く質問をするんよね。けど、「どうしたら」っていう風に考えたら、上に向くやん。どうしたら良いんやろなって。つまり、自分への質問の質が人生を左右するんよ。
―マイナスの質問をするのではなく、どうしたらできるかということを考えるんですね。
そう、考え方をちょっとずつ変えていくことが大切。それがメンタルコーチングにもつながっていて、感謝できることに目を向ける。
―面白いですね、私も勉強してみたくなりました。
そう、だからみんな勉強した方が良いんよ。人間関係で悩むんやったら、人間を攻略した方が良い。人を好きになりたいんやったら、人を勉強すれば良い。
―一平さんは「人が好き」というのがキーワードですよね。
人が自分を成長させてくれるし、人でしか自分を見ることができない。それに、嫌いになるより、好きになった方が絶対人生楽しいやん。
全員に好かれようとするんじゃなくて、まずは家族から大事にする。家族を大切にできひん奴が、仕事上手くいくわけないし、家族を笑かすことできひんかったら、お客さんを笑かすことできひんと思うねん。身近な人ほど嫌なところ見えるけど、視点を変えて感謝できることに目を向けたら、徐々に友達や仲間が増えていく。
それと、大事なのが、人の夢を応援すること。応援したら、応援が返ってくるから。なんなら、与えて与えて与えまくるんよ。ほんだら、自分が何か困ったときは、助けようという心理が働くから。奪うじゃなく、与える。
ー好きなことで生きていくには、何が必要だと思いますか?
なんとなくで生きないということ。好きなことで生きるには、みんな下積みとかもあると思うねんな。店やるにはお金が要るからバイトしなあかんし。
例えば居酒屋を開くという夢があって、そのために居酒屋でバイトするんやったら、これはどういう意味があるんやろとか、僕やったらこうやるとか、考えながらなんでもやること。将来これは何に生かされるんやろなって考えながら生きてる人と、何も考えないでお金だけを考えて生きてる人やったら、そら人生変わるよね。
―今やっていることに全力で取り組むことが大切なんですね。
全力で取り組むことと、明確な目標を持つことも大切かな。目標がないなら、今を全力で生きた方が良いと思う。何でも一生懸命やる。その中で何かが絶対見つかるから。見つからへんのやったら、なんとなくやってるからや。
―将来の夢は何ですか?
コーチングとかをやって、人を育てていきたいかな。あとは、人を輝かせたり勇気づけられる人になりたい。そういう人に絶対なる。
―先日お会いした時に、「これからは自営業の時代だ」とおっしゃっていましたが、それはなぜですか?
好きなことをやってる方が、自分の魂が喜ぶと思うしね。
好きで会社員やってる人は素晴らしいと思うで。でも、嫌々やってるんやったら、一回好きなことに人生を懸けてみても良いんじゃない?と俺は思うだけ。失敗しても良いし、絶対に何か残るから。人生の中でなにか一回、勝負をしたと思えるものを残しても良いんじゃないかな。
―会社に所属していると、一歩を踏み出せない人が多いと思うんです。
それはブレーキがあるからやね。会社辞めたらお金無くなるんちゃうかとか、生活できひんようになるんちゃうかとかね。
自分は何を世の中に提供できるか、自分の実力には何があるのかっていうのを、もっとよく考えること。みんな絶対良いところはあるから、それを見ていないだけ。自分の能力を信じて向き合うこと。
―やりたいことが見つからない人に、メッセージをお願いします。
今やっていることに目を向けること。バイトでも勉強でも、一生懸命する。そうしていたら、自然とやりたいことが見えてくると信じてる。俺がそうだったから。できないっていう、自分への思い込みを捨てることじゃないかな。
昔こんなん好きやったなぁとか、過去の自分を振り返ってみるのも良いかもね。一番効果的な自分への質問は、「お金とか仕事とか、何にも制限がなかったら何がしたい?」。これは答えが出てくると思うんよね。
夢って大きいものじゃなくても良い。それも自分への思い込みであって。明日これ食べたい、ここ行きたい。それでも全然良い。むしろそっちの方が達成感あると思うし。小さい夢を少しずつ追いかけていくのも、良いと思うよ。
―最後の質問なのですが、自分に肩書をつけるとしたら何にしますか?
太陽。人を照らして輝かせ続けたいよね。お父さん、お母さんから生まれてくることって、奇跡じゃない?ってことは生まれてきたことにきっと意味はあるはずや。自分を信じることと、今悩んでんねやったら、きっとうまくいくと思うことな。で、昨日の自分より今日の自分、今日の自分より明日の自分、という風に、1ミリでも成長すること。
一番大切なことは、自分を愛すること、自分を認めてあげること、自分を大切にすること。そこがすべてのスタートやな。みんな人のことは褒めるけど、自分のことはなかなか褒めないし認めてあげないよね。でも、自分の魂を喜ばせてあげることが一番大事やと思う。それができたら、人を愛することや自分らしく生きたりすることができるようになると思う。そうやって結果的に、人生が良い方向に向かうと思うな。
自分の正直な気持ちをわかっていても、現実を見てためらってしまう。一平さんは、そんな大人たちに大切なことを、一言で教えてくれる。
迷いのないその言葉に、どれほどの人が勇気づけられただろう。
もしもあなたが自分らしく生きたいと望むのならば、心のブレーキを見つけるために、忙しない日々の少しの時間だけ、自分と向き合ってみよう。
そして、酒場スナフキンでもしこの質問にあったなら、一平さんに語ってみよう。
彼はきっと、応援してくれるはずだ。
「あなたの将来の夢はなんですか?」
<プロフィール>
酒場スナフキン代表 佐々木一平
大阪出身。22歳から29歳、日本を転々と旅をして1000人以上と人生を語り合う。29歳、嫁と出逢い5ヶ月で結婚。嫁の夢を叶える決意をする。30歳、世界を旅をして色々な価値観に触れる。32歳、夫婦で居酒屋スナフキンをオープン。39歳、旅するメンタルコーチとして活動する。
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