ばあちゃん

ツメノアシオト

私には、同居しているばあちゃんがいます。

80代になり、終活を考え始めた彼女は、自分で家を売り、身支度を整え、必要最小限の荷物だけをもって、私たちの家に引っ越してきたのです。

立派なものです。感服です。

ばあちゃんは毎日多忙です。

病院へ行ったり、化粧品を塗ったり、書類を整理したり、アメリカの友人に手紙を書いたり。

ばあちゃんは勉強熱心です。

手紙を書くときは、机いっぱいに和英辞典を開き、傍らにはポケトークとペンとメガネ。テレビで放送していた美味しそうなお店の情報も、すぐメモします。

ばあちゃんは物持ちが良いです。

使い切ったと思っていた洗顔料を、まだ使えるからと、プラスチックの柔らかい容器を半分に切り、容器に付いている洗顔料を毎日少しずつ使います。

ばあちゃんは物知りです。

スーパーで買った茄子で、一つだけちいさいものがあったとき、こういうちいさいものは、塩を揉んでお漬物にすれば良いのよ。と教えてくれます。

ばあちゃんは何にでもお礼を言います。

店員さんにも、ありがとう。家族にも、ありがとう。一日の終わりに、必ず「ありがとうございました」。

ばあちゃんは私のことをよく見ています。

「Yukoさんは、手に職が無くても、頭に職があるからねぇ。」

「Yukoさんは、yukoさんのお母さんと、その妹(私からすると叔母)の良いところを受け継いだねぇ。」

「Yukoさんはなんでも手早くて立派ねぇ。」

なんだか落ち込んでいる日も、むしゃくしゃする日も、家に帰るとばあちゃんがいて、鼻歌を歌いながら小さな背中でお皿を洗ってくれている。それを見て、まあいいか、という気分になる。

ばあちゃん、お願いだから、長生きしてな。

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